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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)881号 判決 1955年7月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士家本為一の上告理由第一、二点について。

論旨は、要するに、民訴五一八条二項の場合に執行文の付与を受けるには、同条所定の証明書の方式が必要であり、もし右方式を履践しないで執行文を付与した場合には、その瑕疵は追完補充を許さないと主張するに帰する。しかし、右条項が「証明書ヲ以テ云々」と規定したのは、主として右執行文付与の手続が本則として口頭弁論を経ないでなされることに照応するのであつて、同条項所定の証明書は単に条件の到来を証明すべき手段として要求されているにすぎず、何等これをもつて所論のごとく絶対に追完補充を許さない不可欠の方式であると解すべきいわれはない。尤も、所論引用の民訴五二八条三項によれば、右証明書は強制執行開始前、債務者に送達することが必要であるが、これは単に債務者に対し執行文付与の当否を検討し、これに対する異議申立の機会を与えることを目的としたものにすぎない。それ故、たとえ付与の当時には証明書の提出がなかつたために執行文付与の手続に瑕疵があつたとしても、その後、すでに債務者が執行文付与に対する異議の訴を提起しその口頭弁論において前記条件の到来が証明された以上、右瑕疵は治癒され、もはやこれを取消すべきものでないと解するのが相当である。そして、原判決認定の事実関係によれば、原審口頭弁論終結当時までに所論条件の履行があつたことは明白であるから、論旨は採用に由なきものである。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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